細川侯五代逸話集
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3はしがき細川家祖・丹後国主幽斎に始まり、小倉藩主忠興、初代熊本藩主忠利、そして光尚、綱利と、五代にわたる逸話集が近世後期に編纂された。その名を「随ずいもんろく聞録」という。全五十五話に及ぶ「随聞録」は歴代当主と家臣の行ぎょうじょう状を描いたものであるが、描写には登場人物の性格や感情も反映されており、時には親しみを感じる話もあり、時には想像を大きく裏切るような話もある。ただ惜しむらくは、興味深いエピソードに満ち溢れたこの逸話集が、地元熊本の人々にさえ認知されていないことにある。そこで「随聞録」を紹介するべく本書を執筆した。用意したのは以下の内容である。第一章は、主に一般読者を対象に「随聞録」の現代語訳を提供し、鑑賞をさらに深める一助となるよう解説を添えた。なお、現代語訳にあたっては、話の内容を分かり易く届けるために、各話に見出し題を付し、平易な言葉で提供することを心掛けた。場合によって、原文の冗長な個所を省略したり、曖昧な部分を確定したり、原文を補

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