熊日釣り情報

しけの日にはわが家で読書

418号

志賀直哉先生の台所

福田蘭童 旺文社文庫 1982年

 文豪の日常を書きとめたエッセー。24編が収められている。戦後、志賀直哉は相模湾に面した伊豆(静岡県熱海市)の大洞台に移住。釣り好きの著者はそこに足しげく通った。

 ある日、志賀の四女貴美子を誘い、3人で船釣りに。狙いはアジとカマスだ。「エサは藻エビかい、それともイカの切身かい?」と志賀が聞いた。「そんな贅沢なエサは使いません」。福田は自作の〝新兵器〟を用意していた。「ゴムみたいなもんじゃないか」。その疑似餌は…。「こんなもので釣れるのかい?」。首をひねる志賀の目の前で、福田はアジとカマスを百発百中で釣った。

 福田は夭折の天才画家、青木繁の長男。音楽家で、「笛吹童子」の「ひゃらーり、ひゃらりーこ」の作曲者と言えば、ご存じの人も多いだろう。

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