熊日釣り情報

しけの日にはわが家で読書

407号

日本の村・海をひらいた人々

宮本常一 ちくま文庫 1995年

 著者は〝旅する巨人〟といわれた民俗学者。全国の津々浦々を歩き、そこに暮らす人たちの話を聞いて詳細に記録した。家船による近海の漁業や海沿いの集落ができていく過程など海に囲まれた日本の原風景が切り取られている。

 釣り糸の天蚕糸(テグス)が広まったのは250年くらい前という。中国から入ってくる薬は紙や布でくるまれ、テグスで縛られていた。透き通ったその糸は弾力があり、水につけると、あるかないか見分けがつかなかった。魚もよく掛かった。大阪に問屋ができ、徳島県堂の浦の漁師たちが船で全国にテグスを売って回った。一本釣りも教えた。

 テグスが広まると、釣りを楽しむ人が現れた。「ひまのある人や、さむらいなどが、なぐさみとして釣をすることはたいへん多くなりました」

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