熊日釣り情報

しけの日にはわが家で読書

422号

荒野の釣師

森 秀人 平凡社ライブラリー 1996年

 著者は雑誌「思想の科学」の元編集長で評論家。歴史や民俗に関する著書がたくさんある。東京に生まれ、子どものころ叔父からさまざま江戸前の釣りを教わって、行き着いたのはヘラブナ釣りという。だから、ヘラブナを中心に淡水魚釣りに関する短いエッセーが多いが、「釣れない釣れない、と口癖のようにいう、そんな釣師のなかに、名人はまぎれ込んでいる」など、釣り好きにはたまらないフレーズが次々に出てくる。

 「技術主義と多獲主義が釣りの品位を堕落させた」と苦言もある。だが、釣りは「狩猟よりはるかにむずかしい技術であり、考える遊戯の最高のものなのだ」と言い切る。著者の森は、釣りの聖典『釣魚大全』(アイザック・ウォルトン著)の翻訳者。ウォルトンの小伝も収められている。

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