熊日釣り情報

熊本日日新聞 釣り欄取材メモ

八代海の孤高の岩礁

芦北町 海浦漁港
平成25年1月19日

 気温は低いものの北風が吹かなかった1月19日、芦北町の海浦漁港から浜村釣具店の遊漁船(浜本栄次郎船頭)で八代海の井手の鼻沖に出ました。狙いは寒チヌ。白神岩近くにアンカーを下ろし、ダゴチン釣りです。

 ここの海に来ると、万葉集にある次の歌を思い出します。

 葦北の野坂の浦ゆ船出して水島に行かむ浪立つなゆめ

 すぐ近くの御番所の鼻に長田王のこの歌の歌碑が建っているからです。さらに、白神岩の近くにくると、別の万葉の歌が浮かびます。

 湯羅の崎潮干にけらし白神の磯の浦

 廻をあへてこぎ動む

 大宝元年(701)10月、持統天皇と文武天皇が紀伊に行幸した時の歌とされます。紀伊ですから、熊本県ではなく和歌山県の由良の崎です。芦北の井手の鼻とは遠く離れ、関係がない「白神の磯」ですが、野坂の浦をうたった長田王は芦北にきた折に白神岩をうたわなかったのでしょうか。うたったけれど、歌そのものが残らなかったのでしょうか。

 八代海に屹立する白神岩を目の前にすると、そんな疑問がわいてきます。雲間から一条の冬の日が射すと、海上の孤高の岩礁は本当に白く輝くのです。その名の通り。長田王が見逃すはずがありません。 長田王がこの海にきた日は天気が悪かった?(掛)

  • 白神岩
Page Top