熊日釣り情報

しけの日にはわが家で読書

417号

あたり 魚信

山本甲士 小学館文庫 2014年

 「おいかわ(追河)」「らいぎょ(雷魚)」「うなぎ(鰻)」「あゆ(鮎)」「たなご」「まぶな(真鮒)」の短編小説6編を収めた。〈奇跡を信じたければ、釣りをするのがいい〉。この言葉が冒頭に置かれ、本文中にも出てくる。舞台は具体的に出てこないが、淡水魚の釣りができるどこかの地方都市近郊のようだ。

 さまざま問題を抱えた各編の主人公たちは、ふとしたきっかけで釣りを始める。そして思いがけないことが起こる。だが、「人生、何とかなる、何とかする」。「おいかわ」は失業中の男が釣り人に声をかけたのがきっかけで物語が展開し、就職する。〈奇跡を信じたければ…〉の言葉どおりだ。それぞれの釣りのシーンは普遍的で、川釣りをしない人にも楽しめる。

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