
しけの日にはわが家で読書
414号
著者は農林省の元官僚。食を通じて人間の行動様式を研究する「食生態学」を確立した。
「ネコの公約数的好物は魚であり、魚の中でもアジがいちばん好きだ」。だがこれは「たかが数千年以内のできごと」。ネコは人と同居するようになって魚好きになった。
東北・北上山地の嗜好調査をしたときの話。小学校の修学旅行で三陸海岸の宮古に行った子どもたちが、旅館の夕食で刺し身と対面した。しかし、「箸を手にしたまま、サシミをジッと見つめて身じろぎもしない」。勇気のある男児が口に入れたが、吐き出した。自分の過去の体験になかった食物との出会いによって引き起こされた食べず嫌いだという。「ネコの嗜好決定時期は生後二週間から二、三か月」。人も幼児体験が大きい。
