
しけの日にはわが家で読書
411号
7編の短編小説を収める。表題作は昭和20年8月15日、疎開した別荘地の湖でバス釣りをしていた少年の話。
夜明けから秘密の場所でバスを釣り、30㎝級を3匹上げていた。そこへキリンと呼ばれる少年がやってきた。主人公は竿を渡した。「いいかい。リールを巻いて持ってくるんだ。もし途中で魚がかかっていたら手ごたえでわかるからね」。当時では珍しい銀色の疑似餌、スプーンを使っていた。竿は六角のアメリカ製投げ竿だ。主人公は動員されたプレス工場で右手の指2本を失っていた。
玉音放送を聞いた後、釣ったバスをさばき、から揚げにして別荘番のおばさん、運転手夫妻と食べた。食後、シナトラのレコードをかけた。
こんな敗戦の日もあったのだろうか。
