熊日釣り情報

しけの日にはわが家で読書

421号

老人と海

ヘミングウェイ 小川高義/訳 光文社文庫 2014年

 教科書にも出てくるアメリカ文学の代表格。首に深い皺を刻んだ老人は、キューバのハバナ近郊の小さな港から手こぎの舟でメキシコ湾に出た。ビンナガ(マグロ)やカツオが群れるあたりで仕掛けを下ろす。餌は生きイワシ。タナは40~125ヒロだが、ロープは300ヒロ用意した。

 それまでの84日間、1匹も釣れなかった。だが、その日は違った。「おいでなすった」「しっかり食いつけ」「いまだ!」。巨大なカジキ、さらに釣魚を襲うサメとの戦いが始まった。攻防は3昼夜。老いてもなお海に生きる男はたくましいが、孤独の哀愁も漂う。何度も「あの子がいたらな」と親しい近所の少年を思う。

 読みやすい新訳。手に取った日、ほぼ半世紀ぶりに米国とキューバの国交正常化交渉が始まった。

Page Top