本・雑誌のご紹介
戦場の詩人 -森國久の写真詩と日中戦争-
若い一兵卒として参加した日中戦争。2年数ヶ月の記録に秘められた詩魂とは―
著 者 :田口 宏昭(たぐち ひろあき)
体 裁 :A5判、上製本、208ページ
出版年月日:2021年10月22日
定 価 :2,530円(本体2,300円+税10%)
I S B N :978-4-908313-78-3 C0023
制作・発売:熊日出版
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説明
内容紹介
天草五橋の架橋や離島振興に尽力し、かつて天草郡龍ヶ岳町長として職歴を閉じた「森國久」。彼はその生きる過程において「戦場の詩人」としての側面も併せ持っていた。
1912年、天草郡樋島村に生まれた森國久は、八代の旧制中学校を卒業し新聞記者となるが、途中、日中戦争の前半期に異国の地、中国南部の広東省で一兵士として過ごすことになる。彼は戦地で休息の時間を利用して詩を書いていたと思われ、その時の写真も彼のアルバムに遺されていた。
著者は、森國久が遺した「戦場のアルバム」に惹かれ、この1冊に凝縮された森國久の人間性を、彼が20代の半ばを生きた日中戦争という時代背景、ならびに中国の南支で経験した日中戦争の局地戦ともいうべき八つの作戦・会戦を関連づけながら描こうと試みた。
日中戦争の戦場の一つである中国・華南での2年余りの兵役期間中に、一方ではアマチュアの詩人の魂を持って、他方では兵士として生きたという経験を言い表すべく、本書にまとめた。
全体を2部構成とし、Ⅰ部においては写真に詩を添えて彼が創案した《写真詩》を中心に、詩人の魂の側面に光を当てている。Ⅱ部では、森國久の足跡をたどれるように写真詩の内容の土台となる戦争の出来事を、彼が参加した作戦ごとに時系列に従い記述すると同時に、彼が戦争に参加しながらも戦争との間に一定の《間合い》をとっていたことを明らかにした。
【目次】
はじめに 森國久による《写真詩》の創案と日中戦争
第Ⅰ部 戦場の詩人
第1章 森國久の詩作について
原稿の発見/編集作業/《写真詩》というジャンルの開拓、森國久の実験/軍隊と写真/森國久はいつ詩を書いたのか/いかなる機縁で詩を書いたのか/詩の内容
第2章 森國久の《写真詩》
はじめに/1 ボブラと兵隊/2 潮水遡行/3 戦争は憎しみと愛のカクテル/4 中山記念碑の頂に/5 征く道/6 牛頭嶺を越える/7 わが愛馬よ/8 河は呼ぶ/9 良口会戦の譜/10 船を漕ぐ/11 私は誰のもの/12 石を枕に/13 藁の寝床で眠る/14 Landing/15 ハイフォンのフランス娘/16 仏印進駐に題す/17 わが車よ、轍よ/むすび
第3章 戦場の書斎
一枚の写真は語る/いくつかの疑問/どうしてここに持ち込まれたのか/読む時間/全体を俯瞰するまなざしと型破り
第4章 友よ-回想と悔恨と
記憶の忘れがたさ/ハノイの夜の思い出と友の安否/幸せであることの苦しさ/人間・森國久と詩人の魂
第Ⅱ部 戦争との距離 -華南の大地で
序章 森國久が参加した戦争・作戦
広東の地理的位置/参加した作戦・会戦の概要/華南の作戦・会戦における輜重兵部隊の任務
第1章 台湾-淡水と広東-増城での作戦
台湾島北部、淡水での作戦参加-一九三八年十月から同十一月まで/第二の作戦-増城東北方作戦
第2章 汕頭・潮州攻略戦と従化での作戦
汕頭・潮州攻略戦の背景/汕頭・潮州攻略戦の構成部隊/森國久、広東-黄埔港を出発/日本軍、汕頭に無血上陸-制圧/潮州の攻略へ向かう/汕頭、潮州の戦略的位置づけ/森國久ら輜重兵部隊、潮州へ遡行中に狙撃される/時間と空間の対決/越智春海と森國久の接点/広州への帰還/従化での夏期作戦
第3章 最も苦しかった戦い-翁英作戦-
森國久が参加した第五の作戦/作戦とその展開のあらまし/作戦への助走/作戦の開始/水尾洞高地の攻略戦/太平墟での戦い/終局/苦しい行軍の翁英作戦
第4章 翁英作戦から賓陽作戦へ
賓陽作戦-森國久が参加した第六の作戦/賓陽作戦と南寧作戦の関連/賓陽作戦のねらい-南寧の危機打開/中国軍の陽動作戦/賓陽作戦に参加する森國久/南寧に向けて/崑崙関の大作戦-日中の激突
第5章 良口会戦から北部仏印進駐まで
弾丸が耳をかすめた良口会戦/仏印進駐とその背景/北部仏印進駐と第二次世界大戦/日本軍による北部仏印進駐/森國久の北部仏印上陸と現状認識/日本への帰還
あとがき
註
参考文献
著者紹介
1944年大阪府生まれ。京都大学大学院文学研究科(社会学専修)博士課程単位取得退学。専門は医療社会学、コミュニケーション論、死の社会文化論。熊本大学名誉教授・顧問。
主要編著書:『病気と医療の社会学』(単著、世界思想社)、『ケア論の射程』(共著、九州大学出版会)、『よき死の作法』(共編著、九州大学出版会)、『よき死の作法をめぐって』(共編著、熊日出版)、『水俣の経験と記憶-問いかける水俣病-』(共編著、熊本出版文化会館)、『水俣からの想像力-問いつづける水俣病』(共編著、熊本出版文化会館)、“TAKING LIFE AND DEATH SERIOUSLY BIOETHICS FROM JAPAN”(CO-AUTHOR, ELSEVIER)
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