
バレンタインの苦~い思い出
大学生のころ、阪急北千里線沿いの学生専用下宿に住んでいた。広告研究会の悪友Kも同じ下宿だった。
大学2回生の冬。2月14日は大学入試のため授業は休講だった。
「電話ですよ」。
大家さんの部屋に呼ばれて受話器をとると、広告研究会の1回生S子からだった。
彼女は北陸出身で、あまり目立たない、地味な感じの子だった。
「先輩に渡したいものがあるのでマロニエに来てくれませんか。Kさんも一緒に」。
マロニエは阪急千里山駅の隣にあった喫茶店で、オムライスが人気だった。
「チョコレートをくれるみたいだ。ついでにお前も一緒に、てことらしい」。少し浮かれていた。
店に着くと彼女は先に来ていて、テーブルの上に袋が二つ置いてあった。
私の前には無地の小さい袋。開けてみると、いつも食べている普通の板チョコだった。
一方、Kの前に置かれたリボン付きの袋からは、大きなハート型のチョコレートが出てきた。当時、「傷だらけの天使」や「前略おふくろ様」で人気絶頂だったショーケン(萩原健一)がコマーシャルしていたやつだ。
やられた。
彼女のお目当てはKだった。私を利用してKを呼び出したのだ。純朴そうに見えて、なんという彼女の狡猾さ。
義理チョコも営業チョコも少なくなった今、普通の板チョコでもいいんだけど、と思う今日この頃である。 (U)
3件のコメント
小中高と千里山に住んでいました。マロニエ、懐かしいです。私はコルネが好きでした。もう50年以上前の事です。今はマロニエの裏の団地もすっかり変わってしまいましたね。4月に入ると道という道に見事に咲いていた桜もなくなり少し寂しいです。
yokoさん。はじめまして。
拙文をお読み頂き、ありがとうございます。
千里山界隈は苦い思い出も甘い記憶もある場所です。喫茶マロニエは日常的に利用してました。
バレンタインデーにまつわるエピソードにも登場してしまう馴染みの店でした。
yokoさまへ
コメントありがとうございます。
千里山に住まわれていて「マロニエ」をご存知とのこと、私はそこを
知らないのですが、当時を知っている方からすると昔の風景が思い起こされるのでしょうね。
月日と共にいろんなことや風景や街並みが変わりますが、時々ふとしたきっかけで
思い出すことがあるということは素敵なことだと思います。
懐かしいと思えるきっかけになってよかったです。(や)