熊日出版

本も断捨離? いやいや・・・

拙宅の引っ越しを機に「終活」「断捨離」のつもりで本を整理しよう、と一念発起した。が、高校卒業以来何度も引っ越ししているのに40年以上もずっと持っている文庫本、やっぱり今回も捨てきれなかった。破れたり汚れたりしているのに、絶対読み返すことはないのに、本棚に入りきれないのに、それでも捨てられない…。なんなんだろう、本って。

古い流行歌を聴くと、自然と当時のことを思い出してしまう。特に、付き合っていた人がいたら、その人の思い出が鮮明に蘇るのは私だけではないだろう。だけど、本を開いても誰かの顔を思い浮かべたりすることは滅多にない(童話や絵本を読んであげた子供は別にして)。本は一人で楽しむもの、自分だけの世界に入るためのツール。いろんなことを教えてくれる親であり、友達であり、師でもある。今の自分を形成している血や肉、骨をつくってくれたような気がする。好きな本を捨てるということは、大げさに言えば、自分の人生の一部を捨てることに等しいような気すらしてくる。

引っ越しの準備を始めた頃の気合いはどこにいったのやら、結局ほとんどの本が新しい家に移った。傷んだ表紙は自分と一緒にいろんな場所を旅した証。多分この家が終の棲家だから、単行本の前で窮屈かもしれないが、君たちもやっと安住の地で暮らせることになったわけだ。おめでとう、というべきか、いや、お疲れさまでした。だな。(U)本も断捨離

 

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